「旅行者の朝食」


好きなエッセイストに「米原万里」さんと言う女性がいる。
この人はとにかく文章がとても上手で、読んでいると思わず彼女の本の世界に入り込んでしまう。
切れ味が鋭く、語彙が豊富。「この人、頭良いなぁ」と自分なんぞは思ってしまう。
引き込まれるような「美しくて楽しい」日本語の文章が文中を踊っているのである。

米原さんの肩書きは「ロシア語会議通訳」。日本におけるロシア語通訳の「スペシャリスト」であり
第一人者である。ソヴィエト時代から数えて200回以上も旧ソヴィエト圏を訪れているのだそうだ。
(見た事が無いのが残念なのだが、テレビにもよく出演しているらしい)

彼女のエッセイの面白い所、特に好きな所はそんな「ロシア語通訳」という職業から
ソヴィエト(主にロシア)を題材にした裏話やソ連圏で出会った面白い人々とのやりとりを
「文章の組み立て方が上手だなぁ、、、自分も見習いたい!」というほどの美しく、軟らかなタッチで
書かれている所だ。

実際に旧ソヴィエト圏の「アルメニア共和国」に住む自分や他の日本人には事情が
痛いほど分かるし、状況がリアルに思い浮かぶので本当に面白い。

東京から再びイェレヴァンに向かう時に何冊か本を買い込んだ。
外国に住むと「日本食」と「活字」に飢える。とにかく、無性に日本語の本を読みたくなる。
そして、読み終わった本はイェレヴァンにある日本語教室「日本語学校」に寄付する。
そこで働く先生達で回し読みしたりして、笑い転げる。

米原さんの最新刊かどうか分からないのだが、平積みになっている本に「旅行者の朝食」という
本があった。勿論、好きなエッセイストの本なので迷わずに買った。で、飛行機の中で読んだ。

本のタイトル「旅行者の朝食」は旧ソヴィエト時代にあった「缶詰」らしい。
中身は魚だったり、鶏肉だったり、牛肉だったり、、、

コレがソ連人でも名前を口にしただけで吹き出してしまうようなシロモノだったらしい。
つまり、、、「マズイ」らしいのだ。米原さんも「朝から何も食べずにやっと食べ物にありつけた時に
コレを食べたら美味しいと感じるかもしれないが、、、」と語っていた。

米原さんは「最近、とんと見掛けなくなった。」と文章に書かれていた。

でも、読んでいたら「ソ連人でさえマズイともらす缶詰とは、はたしてどれほどマズイのだろうか?」
と、読み終わった頃には「是非とも食してみたいゾ!」と思ってしまった。もぅ、興味津々!

コレはマズイに違いない!もしかしてコレまでの人生の中で最高に「マズイ」のかもしれない。

同様に、米原さんは「ハルヴァ」というお菓子にも触れていた。
コレは「旅行者の朝食」とは逆に、最高に美味しいお菓子だったらしい。
米原さんはこの「ハルヴァ」の美味しさが忘れられなくてソヴィエト中で探し求めていたようだ。

米原さんの本によると「ハルヴァ」の本場はイランとかトルコらしい。
という事は、それらの国に挟まれたアルメニアに無いハズが無い!探せば有るハズだ。
コレも是非とも食べてみたい。米原さんは「絶品!」と評価されていた。

というワケで、「旅行者の朝食」と「ハルヴァ」を求めてイェレヴァン中を彷徨った。


で、「彷徨った」と言うのはウソ。いつも利用しているスーパーで二つとも呆気無いほど
簡単に見付けてしまった。


ワシ:「おばちゃーん、ハルヴァって置いてますかぁ?」

店員:「有るよ、有るよ。コレがそうだよ。」

ワシ:「えぇーッ?コレが「ハルヴァ」ですか???」

スーパーでいつも見掛けている変な缶詰、正直に言うと「美味しそうじゃないから眼中に入らなかった」
毎日見ていた缶詰が「ハルヴァ」だった。えぇー、、、コレがハルヴァでしたか、、、

缶に「ハルヴァ」の写真があるのだが、それがどうしても「美味しそう」じゃなかった。
見た目で判断してはイケナイ!という事だ。でも、美味しそうじゃないよなぁ、、、
そんなもんで、毎回見てはいたのだが「無視」していた。ゴメンよ!「ハルヴァ」

早速、購入。(因みに買ったモノはシリア製だった。)

ワシ:「おばちゃん、「旅行者の朝食」って言う名前の缶詰はありますか?」

店員:「有るよ!有るよ!コレがそうだよ。」

コレまた、呆気無いほど簡単に見付かった。普通の缶詰だ。
ハァー、コレですか。他の店でも見掛けたような気がするなぁ、、、

これまた購入。

ウキウキしながら家に帰って早速食べてみる事にした。

チョット、ハレーション起こして失敗した写真ですが載せておきます。


コレが「旅行者の朝食」

さて、食べてみた印象は、、、「驚くほどマズイ!」というワケではなかった。

まぁ、そんなものかもしれない。頭の中で「とにかくマズイんだッ!」というイメージを
膨らませていた。つまり、「マズイッ!」という先入観を持って口に入れていたのだ。
「ビックリする程、マズイんだッ!」と、勝手にワクワクしていたようだ。

「マズイーッ!もぅ一杯!」というコマーシャルで話題になった「青汁」も
自分はどちらかというと好きだった。違和感無く飲めた。
自分が昔住んでいたマンションの近くに「青汁スタンド」なるものが有った。

夏の暑い日は「夏バテしないように」と、毎日「青汁スタンド」に行って
「青汁」を飲んでいた。

友達は「あんなモノよく毎日飲めるよねぇ、、、尊敬するよ、マジで。
俺、アレを飲んだ時は虫になったような気分だったわ」と言う。

自分の概念の範疇で言えば、単なる「野菜ジュース」なのですが、、、?

後に、カリネおばさんに「旅行者の朝食」の事を話してみたら自分が買った
「旅行者の朝食」とソ連時代の「旅行者の朝食」は別モノだったらしい。
ソ連時代のソレは缶がもう少し平べったくて、味も別の意味で「格別」だったらしい。
つまり、米原さんが買って食べた「旅行者の朝食」とは別物らしい。
自分が買ったのは「ニュータイプ!生まれ変わった・旅行者の朝食」だったようだ。(チョット残念)

上手く説明出来ないのだが、日本でも売っている「コンビーフ」の汁漬けみたいな感じ。

カリネおばさんの義理の妹、グルジアのアジャラ自治州生まれのジーカさんの話によると
「イヤァ?マズくはなかったよ。私はソ連時代に時々食べていたケド、、、?」と言っていた。

味覚は人によって、または生まれた国や環境によって左右するのだろう。

自分も、今の「旅行者の朝食」に限って言えば「決して美味くはないケド、歯を食いしばって
食べなければならないほどマズイ!と言う程ではない。」という感じだった。

バターをたっぷり塗った焼き立てのパンに挟んで食べたら美味しいんじゃないか?とさえ思った。
コレにて一見落着。他のソヴィエト製(もぅ、ロシア製でしょうケド)の缶詰に興味が出てきた。
安いケド、「大当たり!!!」という缶詰を発見したくなってきた。

きっと、連邦崩壊以後はマトモな缶詰を作るようになったのでしょう。



さて、、、脂っこい「旅行者の朝食」の後は口直しに甘いもの、、、「ハルヴァ」を。

コレまた、ハレーション気味で申し訳ない。


シリア製の「ハルヴァ」。アルメニア製も店でよく売ってる。

まず、、、色が、、、ウーン、、、なんとも形容し難い。薄緑色のような、汚い乳白色のような。
ロシアの家にはこんな感じの「程よく汚くなって、少しカビが生えかけてきたような、
元々は白かった壁」がある。ウーン、何とも言えない色ですな。

ブッチャけた話、見た目が「美味しそうじゃない」のである。
しかし、「見た目に反して美味しいのかもしれない」と思って缶を開けてみると、、、

コレは、、、甘い。不思議な味がする。あー、確かに和菓子にこんなのありそうだなぁ。

米原さんがプラハ時代に級友のロシア人の女の子・イーラに一口だけ食べさせて貰った「ハルヴァ」には
遠く及ばないシロモノであろう事は買う前から分かっていた。
美味しい「ハルヴァ」は中近東、特にイランやトルコでハルヴァ職人によって作られているのだそうだ。

もしかしたら、近く「トルコ」に行く用事があるかもしれない。
その時は「ハルヴァ」を探してみよう。出来れば、「手打ちうどん」みたいに作っている所が
見る事が出来る、作りたての「ハルヴァ」が食べてみたい(と、思っている)。

しかし、、、何故か本に書いてあると食べてみたくなるものだ。
それが、好きな作家が話題にしたもので、手に届く距離にあるものであれば
なんとなく試してみたくなる。

話が急に変わって申し訳ないが、蜂蜜を買った(純アルメニア産の天然モノ!)。
前住んでいたアパートの近くに「インターネット・カフェ」が有ったのだが、ソコが何時の間にか
潰れて「蜂蜜屋さん」になっていた。面白そうなので、早速行ってみました。

すると、恐ろしい程に「ガラーン」とした店内にポツンと「蜂蜜」が並んでいた。
店員のおばさんに聞くと「アルメニア産の天然モノです。体に良いんですよ!」と言われた。

アルメニアはすっかり冬モード。少し扁桃腺も腫れて調子が良くなかった。喉も痛かった。
もしかしたら「薬を飲むよりも良いかもしれない!」と思い、早速購入!

今まで「あめ色」した蜂蜜しか見た事がなかったのですが、この蜂蜜は乳白色。
さて、早速食べてみると、、、

ウーン、美味しい!臭いが少し「アンモニア」っぽい所が余計に「天然モノ」っぽくてヨロシイ!
翌日、喉の痛みがスッカリ無くなりました。体も軽くなったような、、、?(単純だな、俺って)
コレは良いモノを見付けた。東京に帰る時は家族へのお土産リストに入れておこう。


アルメニアの蜂蜜。コニャックと一緒に「お土産」にしてみては?