
「グルジアC トビリシに住む日本人」
スイスイと不思議なくらいに飲めてしまう美味しいワインだけでは物足りなくなり、
夜中に大通りのキオスクでビール「カズベギ」まで買ってきて飲んでいた。
そのせいで今日は頭が重い。明らかに飲み過ぎた。分かっていてもいつも失敗する。
ダラダラと支度をして、ホテルを出た。ポーターさんにタクシーを捕まえて貰って
例の日本語学科がある私立大学に行く事に。ポーターさんが運転手に所在地を説明するも
運転手は「そんな大学、聞いた事も無い」と言う。
まぁ、仕方が無い。日本では道を知らない、地理が分かっていないタクシー運転手なんて
居たらニュースになるかもしれないが、コーカサスのタクシーはコレが普通。
アルメニアのタクシーも大体こんな感じだった。
1回、「バルカムチュンへ」と言ったにも関わらず「オペラ座」に連れて行かれた時は
思わず唖然として声も出てこなかった。客が道を説明しなくてはならないのである。
しかし、トビリシの道なんて全く知らないから正直言って非常に困った。
運転手は、「なぁーに、大丈夫!その辺を歩いている連中に聞きながら行くよ!
聞きながら走ればキエフにだって行けるってなもんだッ!」、、、大丈夫かな。
運転手は予め「何処まで」というと値段を言ってくれる。それ以上は払わなくて良いらしい。
その点はアルメニアよりも遥かにしっかりしている。アルメニアのタクシーはとことんボッたくる。
なので、値段に関しては安心して乗っていられた。
が、不安だ。少し時間に余裕を持って早目にホテルを後にしたのだが無事に到着するのだろうか?
運転手はよく見ると結構なおじいちゃんだった。生真面目そうな、そして不器用そうな人だった。
しかし、話し掛けたら意外なほど気さくな人で質問には何でも率直に答えてくれた。
そことなくグルジアでの生活について聞いてみると。
運転手:「最低だ。ソヴィエト時代の方が全然良かった。今のこの有様は何だ?
若い連中はロクに働きもせず、街をブラブラしているだけだし
必要も無い携帯電話だの新しい車だのは欲しがる。本質を見誤っとる。」
ワシ:「今は外資等が沢山入り込んで、生活様式等が劇的に変化している時期なのでは?
アルメニアに比べたら遥かに街が洗練されていると感じますよ。
それに、アメリカはグルジアに多額の援助を約束しましたし。」
運転手:「アメリカが何をしてくれると言うんだ?連中のせいでグルジアは貧富の差が広がり、
国民の殆どが這い上がる事の出来ない絶望の淵に叩き落とされたんだ。
そのアメリカの援助とやらが俺達を潤してくれるとでも思うのかい?おめでたいね。
シュヴァルナッゼを含む、権力者連中のポケットにその金は納まって終わりさ。
この国はトコトン腐っている。ロシアに対するグルジア人の態度なんて最低だ。
ロシアは何時だってグルジアを助けてきた。それなのに、グルジアの馬鹿ときたら。」
ワシ:「へぇー、意外ですね。おじさんはロシア親派ですか。グルジアでは少数なのでは?」
運転手:「最初、頭の悪い連中は諸手を挙げて先進国や資本主義を歓迎したんだ。
ところが、何でもかんでも奪い取っていくだけの海賊みたいな連中だと気が付いたんだね。
しかし、気が付いた頃はもう遅くてね。アトは連中のしたい放題さ。
沢山の情報や、見たことも無いような便利で美しい商品が雪崩の如くグルジアに入って来て、
完璧にこの国の連中は頭がおかしくなっちまったんだな。
そりゃ、物が慢性的に不足しているソ連圏の連中はある意味、原始人と一緒だったワケだからね。
酷いもんだよ。この国の連中の物欲を見ていると寒気がするね。
皆、どうしたら働かずに簡単に金持ちになれるかという事ばかりを考えているよ。」
まぁ、「働かずに金持ちになる」というのは先進国の人間だろうが途上国の人間だろうが誰でも考える事だ。
しかし、民族主義が声高に叫ばれるこの国でこういう意見を淡々と言える人は珍しいのではないだろうか?
もしかして、このおじさんはグルジア人ではないのかもしれない。ひょっとして、、、?
運転手:「ああ、そうだよ。親父がグルジア人だけれども、お袋がアルメニア人なんだ。」
あー、やっぱり。こういう人は物事を非常にニュートラルに見られる。
アルメニアに住んでいてアルメニアから来た事を言うと、顔をほころばせて喜んでくれた。
そんな、アルメニア人とグルジア人の両親を持つおじさんに早速、「両民族の違い」を聞いてみた。
運転手:「アルメニア人とグルジア人はお互いにいがみ合ってるけれども、アルメニア人の
グルジア人に対する態度の方が数千倍マシだ。連中はまだちゃんと話が出来る。
ところがグルジアの馬鹿ときたら、本当にもう、、、なんていうか、、、」
ココまで自虐的に自分の民族をケチョンケチョンに言う人も珍しいのではないか?
なんだか、グルジアとグルジア人が憎くて憎くて堪らない!という感じだった。
しかし、僕には逆にアルメニア人よりも信頼出来た。アルメニア人は外国人には理解出来ない
妙なナショナリズムをふりかざすので聞いてる方は堪ったものではない。
現実に目を思いっきり背けて「アルメニアは世界で一番素晴らしい国です」等と平気で言う。
この話が始まると、在アルメニアの日本人は身構える。話が長くなるし、聞いてると疲れるからだ。
特に、外国に出て行ったアルメニア人は殆どの外国人がアルメニアなんて国を知らないのを良い事に
恐ろしいほど美化しまくって好き勝手に言っている。
日本人であればいったん自分の国の状況を鑑みてから喋るが、アルメニア人はそれこそ好き勝手に
喋っているので腹が立つ事この上ない。突込み所は幾らでもあるのだが、突っ込むのもイヤになる。
事実、アルメニア文学やオペラ座等で見られるアルメニア人による演劇等は
「ナショナリズム高揚」を盛り込んだ内容が殆どだ。何回か見たが外国人にはしんどい内容だ。
恐らく、他のCIS諸国で生まれたアルメニア人とアルメニアで生まれたアルメニア人との間にある
温度差はここからくるのだと思う。マーラはアルメニア人がお国自慢を始めると決まって
「アンタ、バカじゃないの?この国が素晴らしいって?おめでたい脳味噌だわね。
何で素晴らしい国から何百万人もの人が国を捨てて出て行くのさ?etc、、、」
僕もマーラみたいにハッキリとモノを言えればなぁ、と思う事は度々あった。
アルメニア人、こういう事を言わなければ良い人達だと思う。もう少し付き合い易くなるのに。
日本のテレビ局の「さんまの踊る大走査線」の企画の一つだった
「アルメニア美人は世界一!」というのを見た時は寒気がした。
事実、空港カウンターのネーチャンは「アルメニアには美人しか居ないのよ」と涼しい顔で言っていたし。
「美人も居るけれども不美人も居る」と言うならば、まだ可愛いのだが、、、
「私が世界で一番の美人だとは思わないが、この子(二人の赤ん坊)のお陰で
私は世界一の幸せ者だと思う」と控え目に謙虚に語っていた子持ちの若いお母さんは
半分ロシア人、半分アルメニア人だ。因みに、旦那さんもロシア人とアルメニア人のハーフ。
あの番組、知り合いが沢山出ていたので笑った。イェレヴァンは本当に小さな街だと感じる。
日本に居る時に、「テレビに思いっきり映っていたよ。」と言ったら
「そのビデオカセット、お願いだから頂戴!」と子持ちの美人ママ・Zさんは言っていた。
僕は彼女みたいに控え目な女性が好きだなぁ。しかし、姑とは激しくやり合っているらしい。
或る日、「世界で一番素晴らしい男はアルメニア人男性!世界で一番素晴らしい女はアルメニア人女性!」
とゴールデンタイムのテレビで思いっきり言ってたのには力が抜けた。
後日、日本人の友達に電話でその事を話したら「あー、俺も見てた!見た瞬間、顎が外れる程笑ったッ!」
と言っていた。しかし、アルメニア人は真剣にそう思っているのだ。
シリア人の友人に至っては「アルメニアに住むようになってからトルコ人に同情するようになった」
とまで言っていた。笑えない話だが、アルメニア人は「選民思想」のようなものがあるので
何処か他民族を小馬鹿にしたような物言いをするのでなんとなく頷ける。
しかし、この運転手さんに限って言えばアルメニア人の全く逆だ。現実と向き合っている。
グルジア人がこんな人ばかりではないのだろうけれども、物凄く意外な感じがした。
(後日、個人が持つ政治思想によって国を良く言ったり悪く言ったりするグルジア人がいると分かった。)
なんか、あんまり根掘り葉掘り聞いたら悪いような気がしてきた。
その後は、なるべく当り障りの無い事を聞くように心掛けた。
しかし、普通の市民をここまで追い詰めるくらい生活は厳しいのかもしれない、とこの時は思った。
運転手:「厳しいよ。本当に厳しい。東京もグルジアみたいに電気が無くなったりするかい?
まぁ、インフラは仕方が無いとしてもだ、国の未来に全く希望が持つ事が出来ない事こそ
一番の問題だ。連中は口では民族主義を叫んでいるけれども、ロシアのビザを何日も待って
出稼ぎに行くんだよ。本当にこんな出鱈目な国もないよ。全てが滅茶苦茶だ。
え?こんな国に日本人が長い事住んでいるって?本当に?変わった人もいるんだなぁ。」
しかし、時間に追われて毎日仕事に忙殺されて、休日を返上して働きに出かける日本人の生活なんて
彼には想像も出来ないかもしれない。僕は、日本が世界で一番素晴らしい国だと言う切る気は無いが、
実際にコーカサスに住んでみて「コーカサスに生まれなかった事は感謝する」事は時々ある。
アルメニアもグルジアも領土問題を抱え、今でも紛争が絶えない。
しかし、ゆっくりと時間が流れるヨーロッパ地域は「隠居する」にはとても良いと思う。
お金さえあれば、何処でも暮らしていけるものだ。しかも、日本よりも不便だが安上がりに生活できる。
実際、フィリピンは日本の年金受給者が落としていってくれるお金をあてにして、
日本人の隠居者を受け入れる準備をしているらしい。治安が最大の問題だろう。
バルカンのブルガリアで生活している日本の年金受給者の事もテレビで紹介していた。
何も、窮屈で小さな日本の家でいつもお金の事を考えながら老後を送らなくても良いのだ。
アルメニア人の旅行者でさえ、「ブルガリアは物価がメチャ安い」と言っていたから相当安いのだと思う。
ブルガリア語のホームページを読んだら結構ウクライナ語やベラルーシ語よりもロシア語に似ているので
書いてある内容が把握し易かった。年金を貰える歳になったらブルガリア移住を企んでいる。(当分先だが、、、)
でも、コーカサスで隠居するという事は普通の日本人にとっては余りにも厳しいかもしれない。
10年、20年でインフラが整備されるとは思えないし、特にアルメニアは国外に脱出していく連中が
後を絶たないので近い将来、形骸化された国家としてだけ残っているかもしれない。
税金を払わない奴が殆どなのに加えて、国民数が恐ろしい勢いで減少しているアルメニアは
もしかしたらグルジア以上に厳しい未来があるのかもしれない。
アルメニアに比べたらグルジアの状況は幾らかマシかもしれませんよ、と話を向けてみると
運転手:「しかしねぇ、チェチェンだのアブハジアだのと国境を接しているグルジアの方が
遥かに状況は悪いと思う。とにかく、外国人のビジネスマンが誘拐されまくってんのよ。
しかも、チェチェン人なんて外国人を掻っ攫って来たら、まず指をちょん切るのね。
で、その指を政府やら大使館に送り付けて身代金を要求するのさ。何で指かって?
指紋とかで本人かどうか確認し易いんじゃない?首だと死んじゃうからね。
そんなワケで、この国は本当はロシアが言う通りチェチェンとの国境を完全に封鎖して
チェチェン人が入り込めないようにしないとダメだんだよ。
しかし、民族主義に頭がヤラれたグルジアのバカは「チェチェンは同胞」等とぬかしやがる。
これじゃ、その内に旅行者だって激減するさ。あー!もぅダメダメ、全部ダメだ!この国は。」
ワシ:「パンキシ渓谷だのアブハジア国境付近だのは、旅行者は入って行けないでしょう?」
運転手:「ところが、冒険主義者は金払ってでも行くんだよ。俺だったら金貰っても行かないけどね。」
カラバフは緊張が続いている地域でも歩けば入っていけた。(本当はダメなのだが。)
確かに、普通の旅行者なら行きたがらない地域にワザワザ行きたがる奴は居る。僕がそうだ。
しかし、話し好きな運転手さんでラッキーだった。イロイロと話が聞けた。
散々迷ったのだが、なんとか目的地に着いた。
アッチコッチを走り回って遠回りしまくったので、相当な距離を走ったと思う。
しかし、最初に言った金額しか彼は要求してこなかった。素晴らしい運転手さんだ。
アルメニアだとこうはいかない。散々意図的に遠回りして、お金もボッったくりまくる。
が、なんとくなく申し訳なく思い多めに渡した。と言っても大した金額ではなかったが。
「ありがとう、ありがとう。でも、カフカスでは勇敢な者になろうとしてはいけないよ」
と、最後にポツンと言われた。肝に命じるべきアドバイスだったと思う。
、、、はて?何処が大学の入り口だろう?と迷ったが、その辺を歩いているグルジア人に付いて行ったら
中に入れた。建物自体はそんなにガタはきていない。イェレヴァン国立大学よりも明るい感じがする。
学生らしき集団に「日本語学科は何階にある?」と聞いて4階(3階だったか5階だったか忘れた!)と
言われる。階段で上がろうとしたら「そこにエレベーターがあるよ」と言われた。素晴らしいッ!
ところが、このエレベーターが結構曲者で油断しているとドアがスグに閉まろうとする。
駆け込んで来たグルジア人がボタンを押さずに必死に手で重たそうなドアをこじ開けていた。
どうやら「開閉ボタン」が無いエレベーターらしい。
最後に駆け込んで来たグルジア人学生は各階で人が降りる度にドアをこじ開け、身を呈して
「どうぞ、出て下さい」とやっていた。怖いエレベーターだな。
で、4階に到着。学生達の視線が自分に一斉に向けられた。スグに日本人だと分かったらしい。
「こんにちはー」だの「日本人ですか?」だの聞かれる。教室と日本人講師について聞くと
「はい、やぶ蚊(←この時は勿論、本名で言っていた)先生はコチラです。」と案内してくれた。
オォ!なんともモダンな教室ッ!黄色い壁に白い机。コンピューターもテレビもビデオデッキもある!
ウーム、何処かとは大違いだ。本当に学校らしい学校だ。感心した!
と言って、キョロキョロしていたら飄々とした日本人が教室に入ってきた。
「どうも、どうも。今日は学生達が劇をやったり歌を歌ったりするので見ていって下さい。
今、私は忙しいのでチョット失礼します。」これはこれは始めまして、リャンチキと申します。
これがトビリシに住む日本人、「やぶ蚊さん」との最初の出会いだった。
僕以外にも、もう二人の日本人が来ていた。この学校に(日本語学科に?)寄付した日本の団体の代表らしい。
お互い離れて座っていたので言葉を交わす機会が無かったのが残念だったが、援助してくれる団体があるからか
アルメニアの人文大学の日本語学部とはエライ差があるなぁ、と感じた。
そうこうしていたら、着物を着たグルジアの女の子やらトッポイ格好をして鼻の所とお尻の所に赤い玉を、
くっつけた女の子やら何やらがワラワラと入って来た。まさか、「ドラえもん」の劇をやるのでは?
「のび太君」役に適していそうな気の弱そうな男の子も入って来た。こりゃ、楽しみだ。
待っている間に学生達の痛いほどの視線を浴びる。ウーム、まだ日本人なんてこの国でも珍しいのだろうか?
なんとも言えない時間を待っていたら劇が始まった。やはり、「ドラえもん」らしい。
この劇の写真は撮っていたのだが、VAIOがクラッシュした時に全部消えてしまった。
面白い写真だったので掲載出来ないのが残念だが、どうかご容赦を!
キチンとオチがある楽しい劇だった。男の子の方はおっかなビックリやっていて声が小さかったのが残念。
日本の団体の代表らしき女性が一通り喋った後、学校の校長らしき人も出て来て何やら喋っていた。
何かと斜め後ろに座った日本語教師の女性(グルジア人)が説明してくれる。随分と上手な日本語だ。
その後は、学生達が日本の歌を歌うらしい。何を歌うんだろう?
興味津々で待っていたら聞いた事も無い曲が流れてきた。
「しんごままはー、りょうりじょうずー」アハハハハ!何だコレ?
「(学生達が力強く!)おっはぁー!おっはぁー!おっはぁー!」アハハハハ!変な歌!
ウーム、学生にあえてこんな変な歌を歌わせる所がなかなか粋だ!こういうジョークは大切だ。
こういう所では、やはり女性の独壇場。男子学生は照れながら歌っていたが、女性はガンガン歌っていた。
翻訳者や通訳者が圧倒的に女性に多いのも女性の方が語学を学ぶのに適した脳を持っているからだ、
と聞いた事がある。確かに同じ条件で語学を学んだ場合、女性の方がキレイに発音出来る場合が多い。
アルメニアでも、女性の方がガンガンと外国語を臆せずに喋るので上達が早いようだった。
しかし、面白い歌だったな。「北島三郎」とか「森進一」とか歌われたらどうしようかと思ったけれども。
解散した後、やっとやぶ蚊さんとゆっくりと話が出来た。と、思いきや後片付けやら何やらが
あるのでまた行かなくてはならないらしい。
「私以外の日本人と学生は喋る機会がなかなか無いので喋ってて欲しい」と言われる。
小柄な男の子を一人紹介された。学部の中ではなかなかよく勉強する学生らしい。
学生:「どうもこんにちは」
ワシ:「これはこれは」
学生:「私の名前はアショットと言います」
ワシ:「どうもどうも、、、ウン?アショット?という事は、君はアルメニア人かい?」
学生:「はい、私はアルメニア人です。」
ウーム、学校でもアルメニア人に会ってしまった。というかアルメニア人にばかり会ってるゾ!
そんなにアルメニア人はトビリシに沢山住んでいるのだろうか?
学生:「昔は沢山住んでいました。今でも沢山住んでいます。」(←どっちなんだッ!)
ワシ:「この学校、アルメニア人の学生も多いの?」
学生:「沢山じゃないけど居ます。グルジア人の方が多いです。」
ワシ:「何でまた、日本語を勉強しようと思ったの?」
学生:「はい、私は日本の文化に興味があって、云々かんぬん、、、」
その後は日本語とロシア語が複雑に入り乱れたワケの分からない会話だった。
彼はトビリシで生まれてグルジア国籍を持つアルメニア人らしい。ロシア語学校で学んだが、
グルジア語も喋れると言っていた。日本語以上にアルメニア語はアヤシイとも言っていた。
言われてみれば、彼の顔立ちはグルジア人のソレではなくてアルメニア人の顔立ちだ。
が、ニコニコしていて幸せそうだ。どうか、その調子で頑張っておくれ!
その後、やぶ蚊さんが戻って来た。仕事が終わったので一緒に食事に行く事になった。
マシュートゥカに乗って共和国広場の方へ向かった。
慣れた感じでグルジア語を喋っているのが印象的だった。うーん、凄いな。
日本語教師の仕事は大変らしい。教材が恐ろしく不足しているのに加えて
学生達が恐ろしく一般常識が欠けている事を嘆いていた。
確かに、アルメニアの学生と話していてもそう感じる時はある。
考えてみれば、CISでは10年生の学校を終えたらスグに16歳で大学生になってしまう。
(因みに8年の義務教育で終了してしまう者もいる。)
日本人が教育課程で高校をイキナリスッ飛ばして大学生になってしまうようなものだ。
実際、アルメニアの大学教授もソヴィエト時代に比べて学生が物凄く勉強しなくなったと嘆いていた。
日本人に言われる筋合いも無いかもしれないが、確かにCISの人は自分の専門に関して以外の
知識は全く無いに等しい人が多い。決して無知なワケではない。そういう教育方法なだけだ。
しかし、常識に欠けていると感じる事は僕だけじゃなくアルメニアに住んでいた日本人全員が言う事だ。
やぶ蚊さん曰く、
「大体、大学院まで出てる奴等はそこそこ常識もこなれてるんですけどねぇ」と言っていた。
その後、レストランでグルジアでの生活の苦労話やグルジア人のトンデモ話を聞かせて貰った。
共和国広場からは放射状に何本か道が出ている。少し入った所の半地下にそのレストランはあった。
飾らない、普通の感じがするグルジア料理のお店らしい。聞いたらヒンカリもあるという。(やったぁ!)
やぶ蚊さんは、ワインに限らずお酒は全般に好きらしい。
今年のグルジアワインは白が当たりだと教えてくれたので、白ワインを頼む事にした。
他にも、ハルチョを含む幾つかのグルジア料理も併せて注文した。
聞かれてもいないのに、トビリシがイェレヴァンに比べてキレイな街だとか
ワインが美味いし、ネーチャンはキレイだとかたわいもない話をしていた。
そして、グルジアでの生活や何でグルジアに住んでいるのかもそことなく聞いてみた。
ワシ:「しかし、トビリシでは何で猫も杓子も皆、携帯電話を持ってるんですかね。
携帯電話の所有率は明らかにイェレヴァンよりも高いと感じましたけど」
やぶ蚊:「あー、アレね。見栄っ張りな奴等なのよ。買ったはいいけど電話料金が払えなくて
ただ単に見栄で持ってるだけの奴等がゴロゴロしてるよ。
女は携帯を持っていないと男に相手されないし、男は車を持っていないと女に相手にされない。
だから、家財道具を売って車を買うバカもいるし、酷いのになると家を売ってまで新車を
買ってる奴もいるくらいだからね。(朝に乗ったタクシー運転手も同じ事を言っていたな)」
ワシ:「アルメニア人も物凄く見栄っ張りだけど、グルジア人ほどじゃないですね。
家を売ってまで車を買うようなアルメニア人には今の所、会った事が無いです。」
やぶ蚊:「私も携帯を持ってたケド、睡眠薬強盗をやられた時に盗まれちゃってね。」
ワシ:「!?!?!?!?!?!?!?エッーーー!!!」
やぶ蚊:「グルジアは本当に多いよ、泥棒が。泥棒を職業にしている奴も沢山居るからね。
知り合いにも泥棒がいるよ(!)。若い奴等がとにかく働かないでブラブラしてるんだ。」
ワシ:「イェレヴァンで睡眠薬強盗は流石に無いなぁ。まぁ、アルメニアも若い人達が
働かないでブラブラしてますけどね。聞いた限りだと、グルジア人の方が攻撃的ですね。」
そうこうしている内にヒンカリやらハルチョが運ばれて来た。
この間、「ニコラ」で食べたハルチョは小さなスープ皿だったがココではドンブリサイズで出てきた。
ヒンカリもイェレヴァンで見掛けたのよりも、遥かに大きい。3つでお腹いっぱいになりそう。
白ワインもアッサリしていて、スイスイと簡単に飲めてしまう。白ワインも美味しいとは知らなんだ。
あー、ハルチョはニコラで食べたのより美味しい。しかも、ボリュームがかなりあるし。
ヒンカリは胡椒を適当にふったら手で食べるのがグルジア人の食べ方だと教わった。
確かに、ナイフで切ろうとするとイッキに中のスープが出てきてしまう。コレも美味しいー!
流石、長い事住んでいるだけあって美味しいレストランを良く知っている。
コレは良いレストランを教えて貰った。明日も来よう!
そして、アルメニア人やグルジア人について聞いてみた。
やぶ蚊:「私の生徒にも沢山アルメニア人は居るよ。目糞鼻糞だけど幾らか相違点もある。
アルメニア人は簡単に外国に出稼ぎやら移住やらしちゃうよね。ところが、
グルジア人は変な愛国教育をされているものだから、アルメニア人に比べると
国外に出ていきたがらないんだ。出稼ぎや出泥棒(?)の奴等も大概は戻ってくるしね。」
ワシ:「あー、確かに。アルメニア人は出ていきまくりですね。」
外務省のホームページを見ると、アルメニア共和国の国民の総数は350万人という事になっている。
コレは「アルメニア共和国のパスポートを所持している人の数」なのか「共和国に住んでいる総国民数」
なのか正直言ってよく分からない。350万人という数もどうやって調べ上げたのか非常に曖昧だ。
僕の概算だと今現在のアルメニア共和国には200万人くらいしか居ないと思う。
実際、アルメニア人自身も「200万か、もしかしたらそれ以下だ」と言っていた。
日本同様、アルメニアの地方都市も急激に過疎化が進んでいる。
不便極まりないアルメニアの田舎に特に若い人達は住みたくないらしい。
僕はアルメニアの田舎は恐ろしくなるほど静かなので好きなのだが、、、
国民が流出しまくっているCISでの総国民数は極めて曖昧だ。
中央アジアの国々を除いては、恐らく何処の国も国民が様々な理由で減少しまくっていると思う。
実際、ヨーロッパでは少子化問題に歯止めが掛からず様々な対策を施しているらしいが、
大して効果が無いようだ。ヨーロッパで人口が増加している国はアルバニアしかないらしい。
日本人は少子化くらいでギャーギャー騒いではいけない。
先進国は望もうが望むまいがライフスタイルが多様化する事によって、社会的な伝統や規範に
囚われないで生活をする人がワンサカと出てきてしまうものなのだ。
途上国の人々に比べて、選択肢が沢山ある事を我々は神様に感謝しなくてはいけない。
はて?アラブ(イスラム)社会、ブラックアフリカ社会、そして途上国は子沢山家庭が多いような気がするが、
娯楽が少ない国の楽しみと言うとやはり「ソレ」しかないのだろうか?(←失礼!)
日本の女性も、つい最近まで「おしん」のような「平均的アルメニア人妻」のような
しんどい扱いを受けてきたのだから、これからはジャンジャンと人生を謳歌するべきだと思う。
その後、グルジア生活の苦労話をたぁーっくさん聞かせて貰った。
それまで自分の境遇(アルメニアでの生活)は最悪に悲惨だと思っていたが、
やぶ蚊さんの話を聞いて「コーカサス全部が悲惨なのだ!」と考えを改めた。
如何にグルジアの社会がデタラメで、国民も歩調を合わすかのようにデタラメに振舞っている事か?
そんなデタラメなトビリシでサバイバルの生活を毎日送る大変さについて話してくれた。
しかし、彼の口ぶりからはグルジアへの愛情がヒシヒシと伝わってくる。
やぶ蚊さんは、グルジアの社会の現状やグルジア人について包み隠さず正直に全てを話してくれた。
そことなく、「グルジアの事が好きなんですねー。」と話を振ったら「勿論、好きだ!」と言っていた。
良い事も悪い事も全て含めて、その国の事を好きだと言える人は本当に健全な感情だと思う。
治安は幾らかグルジアの方がアルメニアよりも悪いような気がしたが、やぶ蚊さん曰く、
「イヤ、そんなに悪くはないよ。夜中に歩き回っても全然平気」なのだそうだ。
グルジア人は見た目がいかついし、アルメニア人に比べて男性の平均身長が高いように感じたが
本気で凄むと案外スゴスゴと退散するらしい。(アルメニア人と一緒じゃーんッ!)
外国人が誘拐されたりしているけれど、それは大概の場合はチェチェン人やらアブハジア人等の
グルジア人以外の民族の犯行が殆どらしい。
でも、アルメニアに居る時みたいにガイジンだからといって、呑気に暮らしてられるワケではなさそうだ。
アルメニアでは政治家同士の政争や暗殺はあるけれども、基本的に外国人に対しては
いたって無害な人達だ。むしろ、田舎者なので「私、外国人の友達がいるのよ!」と連れ回されたりする。
アルメニアの女性には、何やらそんな可愛いらしい所があるのでついつい許してしまう。
ついつい話が進むにつれて2本目の白ワインも空けてしまった。
やぶ蚊さんはアブハジア以外の全ての地域に行ったらしい。
パスポートにグルジアのヴィザがベタベタと貼ってあるせいでアブハジアには行けないそうだ。
コーカサスはこの辺が面倒臭い。恐らく、僕がアゼルバイジャンには行けないのと同じ事らしい。
他にも、アジャラ自治区や南オセチア共和国などにも行ったのだそうだ。
いいなぁ、出来れば僕は更にその北の方に行ってみたい。
でも、カリネおばさんの義理の妹・ジーカさんの生まれ故郷であるアジャラ自治区は
一度で良いから行ってみたいと思っていた。コーカサスで一番水の美味しい土地だと言っていたので。
やぶ蚊さんは、グルジアでの生活にはだいぶ慣れている人のようだった。
、、、というよりも、すっかり「グルジア人化」してしまったようにも見受けられた。
その証拠に「自分の喋る日本語がおかしくなってきている事が、自分でも良く分かる」と言っていた。
長く外国に住むと、だんだん母語ではなくてその国の言葉で考え事をしたりするようになる。
当然だ。いつも外国語を喋って生活をしなければならないから。
すると、その外国語が母語に干渉するようになってきて、母語の文法がおかしくなる。
実は、そういう人を見た事がある。余りにも日本での生活が長過ぎて、母語の文法が完全に破綻していた。
母語の発音までもが、日本語のアクセントを引きずるようになってしまい同郷の人に
「アナタ、相当に言葉使いが変だよ」と突っ込まれたりしていた。
やぶ蚊さんは、どうやらそうらしい。
話を聞いていると「この人はグルジアに骨を埋めるつもりで住んでいるのでは?」と思った。
CISは好きになる人と嫌いになる人と極端に別れる不思議な土地。
グルジアは美味しい料理も、美味しいワインもある。ワイン好きの彼には居心地が良いのかもしれない。
得な事があるワケでもなく、便利な日本での生活を捨ててCISに住んでいる彼の存在が嬉しかった。
自分と似たような「モノズキ人種」が居たからだろうか?
電気はしょちゅう無くなるし、泥棒は多いし、マトモに働く奴は殆ど居ないし、、、
そんな「トビリシに住む日本の仙人」との出会いは久々の憩いだった。
(僕らが食事したレストランの名前と詳しい場所は忘れてしまった、、、やぶ蚊さんに聞いて下さい。)
その後、朝、昼、夕食付きのゲストハウスに連れて行って貰った。
失敗したなぁ。安い所が他にもあったんだぁ。しかも、食事付だったなんて。
夫婦で経営しているらしい。奥さんが働き者で良く気が利く人らしい。
旦那さんは南部グルジアの出身で「あの辺はアルメニア人が多いから少しはアルメニア語が分かる」と言っていた。
この人もまた、ロシア語が流暢な人だった。自家製造のワインをご馳走して貰う。(飲んでばっかだな)

そのゲストハウスのリビング。

各部屋には洗濯機等、生活必需品が用意されていた。

オーナーのオタリー・ドゥルグヴィシリさん。結構、親日家。
場所を説明するのが難しいので、取り敢えず住所と電話番号、地図を書いておきます。
35. Arsena str. 380008, Tbilisi, Georgia TEL:(995 32)92 08 58. TEL/FAX:(995 32)98 44 43
Mobil:(8 99) 50 44 83,(8 99)17 44 43(←もしかしたら変わっているかも、、、)

Guest House : Lia Salukvadze
その後、やぶ蚊さんの家に図々しくも招待されてしまった。
マシュートゥカに乗って着いたその先に、彼の城があった。大家やら近所は皆、知り合いらしい。
「ガマジョバ」と軽く挨拶をしているのが印象的だった。
で、やぶ蚊さんのアパート。ビーーーッックリした。まず、ドアが縦に異常に長い!デカいッ!
でもって、中に入ってみると、、、まるで映画館のように、恐ろしく天井が高い。
日本の平均的なアパートの天井を3,4階分ブチ抜いた感じ。どうやって冬は部屋を暖めるの?
一般的に、ソヴィエト時代の建物は日本の建物に比べて物凄く天井が高く設計されている。
しかし、こんなに天井が高いアパートは初めて見た。とにかく天井がバカ高い!
やぶ蚊:「ココに来た日本人は皆、映画館みたいだって言うね。確かに天井は高い。」
部屋の中には、日本を偲ばせる懐かしいモノが沢山転がっていた。
察してくれたようで、日本のお茶を作ってくれた。本当に有難い、、、
部屋の中を見渡すと、やはり蝋燭を立てたペットボトルとかも置いてあった。
「中心街に比べて電気は比較的良好に供給されている」とは言っていたが、時々は停電するのだろう。
アルメニアだってしょっちゅう停電しているのだから。
但し、アルメニアと違って水は何時でも使えるらしい。
トイレで用を足したらスグに水で流せる環境はアルメニア在住者にとって非常に羨ましい事だ。
しかし、お風呂が無くて銭湯に入りに行っていると言っていた。
、、、やぶ蚊さん、スゴ過ぎますよ、、、俺、グルジア人に囲まれて銭湯に入る勇気は無いな、、、
時間に追われて生き甲斐を無くしている日本に住む日本人よりも、彼は遥かに生き生きとしていた。
困難な生活を楽しんでいるようにも感じた。(まぁ、コーカサスに住めばそうなるやね。)
お金に縛られさえしなければ人間は、どんな環境でも幸せに生きていけるものなのだ。
モノが無いコーカサス、CIS、旧ソ連圏で学んだ事は正にソレだった。
その後も、コーカサス人の話題を酒の肴に話が盛り上がった。
しかし、やぶ蚊さんは坊主の修行をしたり世界のアッチコッチに住んでいたりと凄まじい人生を送っているらしい。
以前、アルメニアに住んでいてロシア領クラスナダールに住んでいる或るバックパッカーは
やぶ蚊さんに憧れているそうだ。「彼ほど自由人として生きている日本人を知らない」と。
CISに住み続ける人は大体「変り者」が多いが、カフカスに住むのは天然記念物並みの「変り者」かもしれない。
とにかく、楽しかった。彼は質問する事に何でも答えてくれた。
やぶ蚊さん、頑張ってトビリシに住み続けておくれー!また行くよーッ!
トビリシに住む仙人はワザワザ僕の事をホテルまで送ってくれた。うぅ、、、やぶ蚊さん、有難う!