
「グルジアD グルジアから見えるカフカスの未来」
電撃的なニュースだった。「シュヴァルナッゼ大統領、辞任」(2003年11月末)
うっそーーーん!ヤルじゃん!グルジア人!偉い!しかも「無血革命」ですとぉ!(本当か?)
あまりにも唐突で驚いたけれども、実は兆候は以前からあったようだ。
2003年の秋に行われた選挙での不正疑惑がロシア系のニュースメディアでも
散々取り上げられていた。まぁ、CISで不正の行われない選挙なんて無いのだが。
国民の我慢も沸点に達したのだろうか?野党側が大反撃に打って出た。
アルメニアでも大統領選では毎日のように野党を推すデモ行進があっったけれども、
大した迫力は無く、「どうせ、不正の限りを尽くしてコチャランが再当選する」
といった諦めに近い感情から、ダラダラとやっているという感じだった。
ソコには「怒り」や「不満」という感情が、僕の目にはまるで映ってこなかった。
しかし、流石はグルジア人。熱くなると止まらない!ブレーキの壊れたダンプカーのような奴等だッ!
日本人もアルメニア人もこれくらい日頃の生活ストレスを爆発させても良いのだッ!(←違うって)
ソ連時代の民主化の象徴であり英雄だった当時の外相シュヴァルナッゼは
祖国グルジアでの舵取りは大いに誤った。
ガムサフルディア前大統領の極端な民族主義政治に辟易したグルジア国民には
海外で受けが良く、共産主義との決別を謳う新しいタイプの政治家に対する期待は
余りにも大きかったようだ。だからこそ、国民を裏切った政治に対する怒りは大きかったのだろう。
では、そのシュヴァルナッゼの大統領としての資質はどうだったのだろうか?
側近や親類縁者に好き勝手をさせ過ぎて、気が付いた頃には
自分でもどうしたら良いのか分からなくなっていたのかもしれない。
結局、ソ連時代同様の利権政治に政治家は明け暮れて、国民の生活は完璧に蚊帳の外の置かれた。
極端な差別が罷り通り、貧富の差が極限まで開いてしまい
国民は期待した分だけ奈落の底に突き落とされた。(アルメニアもそうだが)
国土の30%は、彼が大統領になってから失った。(南オセティア、アブハジア)
(↑アルメニアは独立してから領土が増えた(奪った?)ので、コレはグルジアとは異なる)
そして、経済は完膚なきまでに破綻した。(それ以前から破綻しまくっていたようだが)
結局、シュヴァルナッゼも単なるソ連型官僚の一人だったという事だ。
まぁ、ココまでよく我慢したよ、グルジア人。アンタ達は大したものだ。
これから、シュヴァルナッゼと側近グループにハッキリとケジメをとらせたら
「新生グルジア」に明るい未来の光を灯して欲しい。
その光はコーカサス全土、ひいてはCIS・旧共産圏の未来をも明るく照らすのだから。
このグルジアの政変には、コーカサス及びCISの未来を占う重要な要素が沢山詰まっている。
CIS全土で不穏な動きがある。何処の国の大統領も任期を大幅に引き延ばしたり
大統領権限を見境無く拡大したりしている。それは、ロシアのプーチン大統領も然り。
野党や、野党を支持する者に対して容赦ないのは何もロシアに限った事ではない。
野党を支持する石油成金が逮捕されたりしているが、そのような事件はCIS各国で起きている。
アルメニアでも議会での銃乱射事件や、テレビ局社主の暗殺事件等は勿論全て政治絡みだ。
日・欧・米のメディアは「ソヴィエト・共産主義に戻ろうとしているのでは?」
と、しきりに書くのも頷ける。実際、その兆候はある。
EUに対抗してロシアがベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンを巻き込んで
新しい経済・通貨圏を作ろうとしているという噂も、まんざら嘘ではないような気がする。
コーカサスについて言えば、とにかくソ連崩壊後は「CISの火薬庫」と化していた。
政治も経済も全てが木っ端微塵に砕け散り、隣国との戦争、独立戦争、内戦で
散々な状況に陥り長い事停滞していた。(勿論、今でも思いっきり停滞しているが)
アリエフ前アゼルバイジャン大統領は自分の余命が長くない事を悟ったのだろう。
実際、アルメニアのニュースソースに限らずロシアのメディアでも盛んに
健康不安説が囁かれていた。
しかし、さすがは悪党。民主主義なんてクソくらえーッ!と言わんばかりに
2003年10月に長男のイルハムに大統領職を「世襲」させてしまった。
権力を世襲させる国なんてロクなものではない。それは、北朝鮮を見れば誰でも分かる。
オイルマネーがアゼルバイジャン国民の生活水準を改善する等と言う事は
期待出来ないという事だ。もしかしたら、またアルメニアと戦争が始まるかもしれない。
これから中央アジア、カフカスのように地縁、血縁を最重要視する民族達は
好き勝手に国民の痛みなど何処吹く風!と言わんばかりに政治家のやりたい放題が
連日のように新聞の紙面を飾るのかなぁ、と思った矢先の「グルジア政変」だった。
ロシアの与党系のニュースサイトではシュヴァルナッゼを叩いている印象があった。
出切れば彼と彼の親族、側近のやらかした悪事の数々を是非とも明るみにして欲しい。
トコトン老体、死体に鞭を打ってこそ忌まわしい過去と決別が出きるのであろうし、
グルジア人が本当に明るい祖国の未来を信じているのであれば、また
本物の民主主義を模索するのであれば、やはりシュヴァルナッゼは断罪されるべきだ。
彼は十分過ぎる程に晩節を汚したのだから。
しかし、僕は密かにグルジアに期待している。民主化がスグに根付くとは思えないが、
アルメニアにもグルジアの波及効果が及ぶかもしれない。そしてCIS全体に。
事件の翌日、ウクライナの首都・キエフやモルドヴァ等で3000人規模の
デモが起きたらしい。ココぞとばかりに、各国の野党は張り切っているようだ。
いいぞーッ!その調子ぃー!頑張ってねー皆ぁー!僕は関係無いケド、、、
と、思ったけれども、民主主義が根付いたカフカスなんてカフカスではないような気がする。
あの気持ち良いまでのメチャクチャ振りが好きでアルメニアに住んでいたようなものだ。
下手に民主主義が根付くと、先進国の連中みたいに我慢が出来ない体質になってしまうし、
便利さに慣れ過ぎると、人間の脳はドンドンと退化していく。
カフカス人特有の人間臭さが失われていくのも、なんとなく寂しい感じがする。
というワケでCISはやはり「世界のアウトロー国家群」で在り続けて欲しい。
アルメニア、グルジアは、どう考えても北朝鮮のような独裁国家になる気配はないから敢えてこう書く。
急に民主主義なんか飲み込むと、消化不良を起こしますよー!
そういえば、ラスタベリ通りを夕方歩いていたら国会議事堂の前でグルジア人が座り込みの
デモをしたいた。(毎日、座り込みをしているらしいが)
つくねんとその場に立ち尽くし、何やらグルジア語のアジ演説を聞いていた。
割と遠くに立っていたのだが、やはり日本人は目立つのだろうか?
何人かが自分に気が付き、ツカツカとコチラに歩いてくる。ウワ、ヤベーよ、、、
案の定、「中国人か?」と聞かれる。「日本人だ」と答えると目が輝きだした。
オバサン:「是非、シュヴァルナッゼが行ってきた悪政について我々の話を聞いて欲しい!
我らがガムサフルディアを死に至らしめた悪党が行ってきた数々の
非道、非合法行為について我々の話を聞いて欲しい!
そして、日本の人達にグルジアの状況を伝えて欲しい」
と言われる。本当に話を聞くだけだろうなぁ?イタイ事されたらイヤだなぁ、、、
しかし、捕まってしまったが100年目。腹を括って話を聞く事に。
いかにも親ガムサフルディア派の人らしく、ロシア語は一切喋らなかった。
恐らく、喋れるのであろうが喋りたくないのだろう。全て英語で説明をしてくれた。
最初は穏やかに話していたのだが、興奮してきたら何を喋っているのか分からなくなってきた。
とにかく、唾が思いっきり飛んでくる。熱いオバチャン、猛烈な民族主義への傾倒振りだった。
こういう人の話の腰を折れば、下手すると殺される。間違いなくボコボコにされる。
別に嫌々聞いていたワケではなかったので、話自体は非常に面白かった。
裏付けの無い話かもしれないが、興味深い話は幾つか聞かせて貰った。
しかし、シュヴァルナッゼがガムサフルディアを自殺に追い込んだ、というのは
無理のある話のような気がした。追い詰めたのかもしれないが、内戦に巻き込んだのは
ガムサフルディアの方だと思う。(←勿論、言わなかったが)

グルジア人の気質を考えると、当然の帰結だったのかも?
一通り話を聞き終わった後、突然「ガムサフルディア婦人があの車に乗っています。
宜しければ、一緒にお話をされますか?」と聞かれたが、流石にソレは断った。
その代わりに、売っているガムサフルディアに関する本を買う事にした。
グルジア語で書かれているものは読めないので、ロシア語で書かれているものを
何冊か買った。彼の生い立ちから、政治信念まで書かれている面白いパンフレットだった。

読めないケド、グルジア語の本も買っておけば良かった。
グルジアが政治に関してどのようなグランド・デザインを描いているのかは分からない。
まだ、コレを書いている時点では大統領も「暫定」だし、年明けの選挙の結果が分かるまで
全てが未知数だ。吉と出るか凶と出るかは、大いなる賭けだったと思う。
しかし、潔いではないか!日本は年金制度改悪、保険制度改悪、イラクへの文民派兵、
止まる事の無いデフレ、企業倒産、失業率の増加、若者の凶暴化、、、
国の未来に自信が持てないのは一緒だし、政治家のレベルも似たようなものだ。
しかし、日本人はグルジア人に比べると変わる事への勇気が余りにも不足しているし、
自分から行動を起こす事を怖がっている。(←ウワッ、落合信彦みたいー。書くんじゃなかった。)
むしろ、良い手本をカフカスの小国が旧共産圏の国々にも日本にも示してくれた。
、、、とまで書いたらキレイ過ぎますかね?なんか変わらないような気もするし、
案外、安定を求めて共産党が票を伸ばしたりするかもしれないし。
しかし、個人的な意見を書かせて貰えば「愛国心」を持つ事は大変に結構な事だけれども、
その「愛国心」によって客観性を失う事は最も危険な事だと思う。
現状をキチンと認識する事は最も大切な事だし、愛国心が昂じて「民族主義」に
安易に走りそうな危うい雰囲気をトビリシの至る所で感じた。
国土を大国に占領され続けたカフカスの小国・グルジアの行方と未来は
僕にとって大変楽しみだ。それは良くなっても、悪くなっても。
アルメニアも何かこぅ、パァーッと派手な事をやらかさないかなぁ。
いささか、グルジアに比べるとサバイバル度が低くて退屈だ。
アルメニアの治安が良い事は感謝しなければならないケド、
アルメニア人は日本人同様、「怒る」事を「諦める」事に簡単に転化させてしまうので、
グルジアのような劇的な変化は起こりそうもないけどね。