
「何でもウクライナ」
ワシ:「チョット待て。アンタの名前はタチアーナ・ミハイロヴナのハズだ。
それなのに、何で契約書類は『テチャーナ』になってるんだ?」
売主:「私の名前はウクライナ風だとテチャーナになるのよ!何か文句有る?」
ワシ:「(ウクライナ風って、、、?)うそぉーん、名前までウクライナ風になるの?」
上記の会話は、アパートの売買契約をした時のもの。
契約書を舐めるように読んでいた時に、名前が違っているのに気が付いた。
その事を、家主に問質したら「ウクライナではロシア人の名前もウクライナ風に変わる」
と言われた。しかし、名前までウクライナ風にする事はないのではないだろうか?
つい最近(2003年12月)にウクライナに居る友達がクリスマス・プレゼントを
送ってくれた。中にはウクライナを思い出す有り難い物が箱一杯に入っていた。
上記の会話を何故今ごろ思い出したかと言うと、プレゼントの中にウクライナの
テレビ番組(主に歌番組)を録画したビデオテープが入っていたのだが、
そのビデオを見ると改めて「ロシア語のウクライナ語化」を感じたからだ。
因みに、僕はウクライナ語がサッパリ分からない。
なので、せっかく録画してくれたにも関わらず幾つかの番組は何を言ってるのかサッパリだった。
しかし、馴染みのある人達がテレビに出ている時に気が付いた事がある。
僕は個人的に虫が好かないのだが、「ニカライ・バスコフ」という口をやたらめったら
大きく開けて、魚みたいにパクパクしながら歌を歌うロシア人の人気歌手が出ていた。
僕は、「アレグ・ガズマーノフ」のようなトラックの運ちゃんみたいな風貌の人は
好感が持てるのだが、バスコフは最初から苦手だった。
まぁ、僕が好きか嫌いかなんてのはどうでも良い。
そのバスコフはウクライナ風になると「ミコラ・バスコフ」になるらしい。
ウーム、「ニカライ」と「ミコラ」は全然違う名前じゃないか?似てるけれども、、、
なので、ロシア人女性の「タチアーナ」さんはウクライナでは有無を言わさず
「テチャーナ(もしかしたらチィチャーナ)」になってしまうらしい。
コレは、公式名だから恐らくパスポート等もロシア人の名前は全てウクライナ風なのだろう。
ウクライナはとにかく独立直後、国中からロシア語の看板を撤去して
全部ウクライナ語にしてしまった。
ロシア語しか知らない僕のような外国人には堪ったものではない。
(↑ウクライナ語が読めなかったから、公衆電話の使い方が分からず本当に難儀した。)
西側はどうなっているのか知らないがダニエツク、オデッサ、キエフ等のような
大都市では、今でもロシア語が普通に喋られているような気がした。
しかし、必死にウクライナ政府はウクライナ語で国中を塗り替えようとしているらしい。
だけれども、ロシア人の名前までウクライナ風にする事はないだろうに、、、?
たまたま、ウクライナの学校は如何なものか興味があったので、アニャとダーシャに
イロイロと聞いてみた。学校での授業はロシア語なのだが、強制的にウクライナ語も
勉強させられるらしい。日常的にウクライナ語を喋る事ってあるのかい?と、聞いてみると
「ウクライナ語は年寄りしか喋らない。ウクライナ人も日常的にロシア語を喋っている」
のだそうだ。ウクライナ全土のウクライナ化計画(!?)の先行きは非常に険しい。
しかし、確かにウクライナ語も聞いていると何となく単語の推測が出来るようになってくる。
歌番組を見ていて思ったのだが、多分、ウクライナ語で「愛している」は「コーハッチ」
と言うのだと思う(間違ってたらゴメンよ)。因みにスペルが分からないのでカタカナですけど。
僕はこの「コーハッチ」(←勿論、男性形、女性形やら過去形で変化しますよ)を聞く度に
吹き出してしまった。
アルメニア語で「クォーヘル」は口語で「突っ込む」という意味なので、ウクライナ語の
愛を歌った歌詞が僕には「私はアナタに突っ込むッ!」と聞こえてしまう。
しかし、「突っ込む」のよりスゴイのは女性三人組の「ВиаГра」というグループだ。
殆ど裸に近い格好で歌っている。動きもメチャ激しい!しかし、見えそうで見えない所がニクイ!
まさか、ヴァレリー・ミラッゼとデュエットしているとは思わなかったけれども。
個人的に、この組み合わせは「モーニング娘。と北島三郎」くらいにインパクトがある。
そう言えば、ウクライナ滞在中にもひょんな所で「ウクライナ人にされてしまった人」に会った。
サーシャの親戚が子宮を痛めただかで入院したので、見舞いに行った。
見舞いと言えば聞こえは良いが、身の回りの世話をしに行った。
婦人科の病院だったので、女性しか患者がいないので最初は目のやり場に本当に困った。
その病院も、刑務所(世話になった事は無いが)のように暗く、ドヨーンと沈んだ感じで
病人の病状がさらに悪化しそうな感じだった。
(ウクライナの病院に関しては、僕も世話になったので何時か書こうと思っている。)
歩いている女性も疲れきっているのか、ガウンがはだけてオッパイ丸出しになっても
「もぅ、どうでも良い。見たけりゃ見れば。」という感じで開き直っている。
そんな素敵な病院で、緑色の瞳をしたエキゾチックな可愛らしい女性と知り合いになった。
僕が日本人だから興味を持ったらしい。名前はマーシャさん。
ベンチに座ってタバコを吸っていたら話し掛けてくれて、そのまま色んな話をした。
マーシャ:「私、お父さんがポーランド人でお母さんがギリシャ人なのよ。
それなのに、パスポートにはウクライナ人って書かれてるの。
酷いと思わない?」
ワシ:「何か不都合でも?」
マーシャ:「いや、特に不都合は無いんだけど、全然ウクライナ人じゃないのに
ウクライナ人にされちゃうのはねぇ。
私のお父さんなんか、ソヴィエト時代のパスポートの民族欄に
『ロシア人』と書かれていたのに、今はウクライナ人。
(ソヴィエト時代は、国籍の他に出自民族を書かせる欄が有ったらしい。)」
ワシ:「普段は何語を喋ってるの?」
マーシャ:「ロシア語。この辺は皆ロシア語喋ってるよ。
あ、今通り掛かったあの娘!あの娘は、麻薬中毒なんだよ」
ワシ:「しぇ−ッッッ!本当に?」
マーシャ:「あー、この辺はアル中も多いケド、麻薬中毒も多いのよ。
海が近いから何だって入って来るの。
私も、2ヶ月この病院に居るケド、スゴイんだよ、本当に。」
その後、ウクライナの病院の恐ろしい実態を聞かされた。
2つある子宮の、病気じゃない方を摘出しちゃったり(←まぁ、日本でもある)、
胎児を手で無理矢理引っ張り出したら植物人間になっちゃったり、、、etc
外務省のホームページを見ると、ウクライナはロシア系住民の割合が20%を
越すと書いてある。マーシャみたいに、ロシア人でもウクライナ人でも無い人も
きっと、沢山住んでいるのだろう。
本人の意思に関わらず、「ウクライナに生まれたのだからウクライナ人」というのは
少々、強引なような気もしたが、住んでいる人達にとっては大した問題ではないらしい。
しかし、独立後に急に看板やら何やらがトッ払われてウクライナ語に変わってしまった事は
「ウクライナ人」にとっても、実は困った事だったらしい。
ウクライナで生まれたウクライナ人なのにウクライナ語が丸っきり分からないという人に
結構、会った事がある。ロシア語で用事が足りるから、ウクライナ語は必要無いのだろうか?
ウクライナ政府は、国家としてのアイデンティティーがとっくのとうに失われて
ウクライナの殆どの地域でロシア語が話されている事に危機感を感じたのだろうか?
だから、「何でもウクライナ化政策」をしちゃっているのだろうか?
そんな国の思惑とは逆に、「何でもウクライナ化」は国民生活のレベルでは
丸っきり進展していないように思える。皆、ロシア語喋ってるし。
現在、CISの大統領を務めている人は自国語よりもロシア語の方が得意な人が
多いような気がする。コチャラン然り、ルカシェンコ然り、、、そしてクチマ然り。
しかし、ウクライナ人のアイデンティティーがロシア語を喋る事によって失われた、
と言いたくなる気持ちも分かるが、ココはグッと堪えて若い世代からウクライナ語を
徐々に喋って貰う事が大切なのではないだろうか?
ロシア人の名前をウクライナ風に変えた所で、根本は何も変わらないのだから。
そう言えば、ウクライナ語とロシア語は兄弟言語と言えども、やはり違う言語だと
思い知らされた出来事があった。
パリーナおばさんの家のカレンダーをフと見やると、赤ペンで何やら書き足してあった。
ロシア語で順番に1月、2月、3月と書かれている。
ロシア語の月の表し方は、英語が分かる人ならおよそ見当がつくと思う。
しかし、ウクライナ語の月の表し方は丸っきり違うので驚いた。
パリーナおばさんも分からないから、ウクライナ語のカレンダーを
自分でロシア語に書き換えていたらしい。
ブリュッソフの某教授が、「ウクライナ語はどちらかというとロシア語よりも
ポーランド語に似ている」と言っていたが、そうなのかも知れない。
ロシア語−ウクライナ語(一部、ウクライナ文字は表示出来ませんが)
январь−сiчень
февраль−лютий
март−березень
апрель−квiтень
май−травень
июнь−червень
июль−липень
август−серпень
сентябрь−вересень
октябрь−жовтень
ноябрь−листопад
декабрь−грудень
誰か、ロシア語で書かれたウクライナ語の文法書とか売ってくれませんかねぇ。
ウクライナ滞在中、アッチコッチの本屋で聞いたのですけど、何処にも売ってなくて。
おぉッ!僕までも「ウクライナ化政策」に巻き込まれている!
じゃ、僕の名前もウクライナ風に「リンチキ」とか「リェンツキ」とか、、、?