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「ウクライナ売ります」
一般的なアルメニア人にとって「政治」というものは、浮世離れした別世界の事であり、
興味の対象になるとすれば、それは大統領選が近い時だけだろう。
「国会襲撃事件」や「テレビ局社主の暗殺事件」等、ソヴィエト時代と同様に
全てが闇に葬り去られている。CISで政治とは熾烈な裏社会であり、一般の人達が
立ち入る事が出来ないアンタッチャブルな世界なのかもしれない。
「大統領が変われば幾らか生活が良くなるだろうか?」
国の大多数を占める貧しい人達の淡い期待は、今の所は常に裏切られている。
コレはアルメニアに限らず、CIS諸国全般に見られる現象であり、
当然、2004年の12月現在でも大統領選で揉めに揉めているウクライナの一般的な
人達についても同じ事があてはまる。
日本の首相やアメリカの大統領が誰かを知っていても、ウクライナの大統領の名前を知らない
ウクライナ人には沢山会った。(←それほど目を背けて意識を遠ざけたい対象なのかもしれないが)
ソ連民主化の英雄と言われたグルジアのシュヴァルナッゼ大統領と、独立後のウクライナで
最も成功したとされる女性実業家・ティモシェンコの比較は非常に興味深い。
方や、掛け声だけの「民主化」を錦の御旗にソ連体質そのものを引きずった腐敗政治を執り
国の利権を搾り取るだけ搾り取って民衆の怒りを買い、大統領の座からスベり落ちたグルジア人。
方や、西側陣営から「現代のジャンヌ・ダルク」だの「ウクライナを民主化に導く女性闘士」等と
持ち上げられている女性企業家・ティモシェンコ。
何やら、日本ではティモシェンコの事をやたらと持ち上げる記事ばかりが目に付く。
グルジアの「バラ革命」をなぞらえて、機動隊にバラの花を渡している写真を見た時は正直
吐き気がした。この民主化騒ぎに乗じて、また何か良からぬ事を企んでいるらしい。
僕の個人的な「毒のある」見解を書かせて貰うのならば、ユーシェンコが大統領の座に就いて
ティモシェンコが首相にでも選ばれた(そんな噂がチラホラ)そんな日には、、、
その日こそが、「ウクライナで民主主義が抹殺された日」になるのだろうと思っている。
この胡散臭い「女性闘士」の本当の素顔を知っている人達はどれくらいいるのだろうか?
政治の駆け引きで言えば、西側にとってはティモシェンコに肩入れをする方が良いのは分かる。
しかし、ウクライナを破綻させたこの悪魔のような女の素顔について日本では全く知られていない。
さて、大統領選の混乱に乗じてユーシェンコにコバンザメの如くくっついている
謎のウクライナ人女性・ティモシェンコとはどんな人なのだろうか?
当時のレートが分からないので円で書けないのだが、「110億ドル」という金額は
間違いなく日本円の「1兆円」を超えている。
ソヴィエト崩壊後で1兆円を稼ぎ出す企業と言えば、かの(良くも悪くも)有名な
「ガスプロム社」しかなかった。
ドニプロペトロフスクに地盤を置くティモシェンコの会社「UESU」と、それにまつわる
子会社・グループの総収益は「110億ドル」もあったらしい。
日本でも、1兆円も収益がある企業なんてそうそう無いだろう。
女の細腕一つで1兆円稼ぎ出したとすれば、それはスゴイ事だと認めなければならない。
問題なのは、この「110億ドル」全てが彼女のポケットマネーと化していた事だ。
ティモシェンコは、(この話が作り話でなければ)元々は違法なビデオカセットを売って財を成したらしい。
この場合の「違法なビデオ」はいかがわしいものではなく、海賊版を売りさばいていたという事ですがね。
(CISでは、この手の著作権の無いビデオやらCDが当たり前のように売られているので、
買う人達にはソレが海賊版か否かというのは問題ではないのだろう)
ソヴィエトの崩壊後、聡明なティモシェンコに最大のチャンスが訪れる。
国営銀行からの融資を盾に、深刻なエネルギー危機に陥っていたウクライナで工場等に
ガソリンを売り歩いた。勿論、ガソリンはロシアから買ったものだ。
現金の受け取りが困難なのをいち早く察知したティモシェンコは、工場から非ッ常ーに有利な条件で
完成品をかすめとって石油以外のあらゆるものが不足しているシベリアに送った。
コレを彼女は数年に渡って繰り返していたらしい。
ここまでの話を聞けばCISでは「立派な女性だ」と言われるのだろう。
日本人の想像も及ばない程の途方も無いインフレ下にあったウクライナで、
貨幣以上にエネルギーに価値がある事を見抜いた男が居た。
パーヴェル・ラザレンコという当時のドニプロペトロフスク州の無名の州知事だった男が
ウクライナの首相にまで成れたのは、まさにドニプロペトロフスクのエネルギーの独占販売権を
ティモシェンコ一族に与えたからなのだろう。東部工業地帯の1州だけならまだ分かる。
首相になったその日、ウクライナには数えるほどしか無かったエネルギー販売の民間企業から
販売権をブン取り、輸入・流通に関する全国的な販売権をティモシェンコに与えてしまった。
そのエネルギー販売権独占の中で出来上がった企業が「UESU」。当時のウクライナの国民総生産の
30%を占めていた「お化け企業」が誕生したワケだ。
ラザレンコがティモシェンコから幾ら受け取っていたかは分からない。
後に、彼はサンフランシスコで大規模なマネーロンダリングとティモシェンコから7000万ドル以上の
金を受け取った罪でブタ箱に入れられているが、今でも彼の隠し財産が幾らあるのかは誰も知らない。
さて、ティモシェンコ率いるUESUはどのようにして「ソヴィエト流資本主義ビジネス」を
実践していたのだろうか?非常に興味深い「ソヴィエト的資本主義」の本質が見えてくる。
例えば、ロシアから買い取った(←正確にはまだ買っていない)エネルギーをウクライナに供給する。
自分の息のかかったウクライナ国内の工場にだけエネルギーを供給するのである。
その工場から出荷される商品をUESU経由でロシア政府に対して「債務」として納める。
ティモシェンコはロシア政府の予算が不足している部分のみにターゲットを絞り、集中的に
「現物支給」をして、しぶしぶ受け取らせていたらしい。
エネルギーと原材料の受け渡しにはトンデモナイ大金を要求し、工場から出来上がる完成品の
受け取り金額に対してはタダ同然のお金しか払わなかったらしい。
こうした逆ざや契約で途方も無い暴利を貪った結果の積み重ねが「110億ドル」になるワケだ。
勿論、日本人には想像も及ばない粗悪品がUESUの工場で作られ、世界一高い値段で
ロシアに売られていたワケだ。UESUは現金のストックが溜まるばかりでウハウハだったのだろう。
日本人からすると、そのような逆ざや契約を押し付けられてよく黙っているものだと思うかもしれないが、
東部にある無数の工場の幾つかが潰れたら、別の工場に移すまでの話。
別に国を良くしようとも、地域の活性を願う気持ち等は微塵も無い。
それの証拠に、UESUが1996年に110億ドルもの総売上があったにも関わらず
1グリブナも税金を払っていない事が明るみに出た。
それに対するティモシェンコに言い分がイカしている。
「ドニプロペトロフスクの2つの孤児院を個人的に支援し、社会福祉に貢献している」
彼女の中で、自由主義経済と言うのは「税金を払うも払わないのも私の自由」という解釈なのだろう。
国家がどうなろうが、祖国の経済がどこまでも破綻しようがお構いないらしい。
しかし、どこまでも強運でウクライナを売り飛ばすかのような勢いがあったティモシェンコにも
落とし穴はあった。
プーチンに代わって大統領の座に就く事を目論んだ石油大手ユコスの社長だったホドルコフスキー同様に
UESUの財力をバックに大統領の座に就く事を目論んだラザレンコは、当時大統領だったクチマを
椅子から引きずり下ろそうとして不興を買った。
プーチンの怒りを買ったホドルコフスキーは、脱税など様々な容疑で起訴され、命からがら
イスラエルに逃げ出した。
同様にラザレンコはクチマの怒りを買い、世界中で最も頻繁に用いられる解任理由である「健康上の理由」で
首相の座を解任された。
プーチンは新興財閥に対して、「政治に口を出さなければ君達の過去の悪行については不問にする」と
言ったにも関わらず、思い上がった新興成金のホドルコフスキーにはその言葉の重みを理解出来なかった。
実際、政治に色気を出し始めた途端にプーチンによって経済界からもロシア社会からも抹殺された。
クチマも、部下が自分に対して絶対的な忠誠を誓う限りは国にはびこる不正・腐敗を見逃してきた。
しかし、自分の座を脅かすとなれば話は別だ。翌日、ドニプロペトロフスクにあるUESU本社を
検察官、警察、KGBやらで構成された捜査官に強制捜査された。
すると出るわ、出るわ。外国からの援助物資の横領、通貨関連の違反、ウクライナ国外への資金の
不法な持ち出し、詐欺、etc、、、
即日、ティモシェンコの夫はとっ捕まり、ティモシェンコ本人もドル紙幣の詰まったスーツケース
を持って空港から逃げ出そうとした時に御用になったらしい。
残念ながら、議会の一員だったお陰で議員免責という特権を受けたティモシェンコは
それ以上の起訴を受ける事はなかった。本当にCISは腐っている。
しかし、ティモシェンコは2004年の大統領選という国の混乱の中で再び表舞台に出てきた。
西側は不思議なくらい彼女の経歴については触れない。彼女の美貌を誉め、「自由の女性闘士」と
褒めちぎる。西側から流されるニュースの行間から何を読み取れば良いのだろうか?
個人的な見解で恐縮だが、ロシアからのエネルギー経路・黒海経由の石油ルートを確実に
ロシアから引き出す西側の立てた交渉人がティモシェンコなのではないだろうか?
CIS・ロシアとEUの間に立つ国で、最も野心的で祖国を売り飛ばしてでも金に執着する
人物としてはティモシェンコがピッタリだったのだろう。
そう思うと、全てがスッキリする。
哀れなユーシェンコがラザレンコと同じ運命を辿らない事を祈るのみだ。
選挙の不正等と言われるが、そんな事はCISでは何処でも当たり前に行われている。
ティモシェンコやソロスに金で買われた学生デモ隊が与党系議員が国会に行くのを阻止したり、
ヤヌコーヴィチに投票しようとした人に対して投票妨害させたりしている事を
EUのマスコミは全く書かない。首都で行われている不正は揉み消されているのに、
ダニエツク等という田舎の州での不正はこれでもかと取り上げるのもおかしな話だ。
アルメニアやグルジアの大統領選挙とはワケも違えば、スケールも違う。
コーカサスの取るに足らない国々に比べれば、ウクライナという大国の政治的な意味合いは
EU・アメリカにとってもCIS・ロシアにとっても余りにも大きい。
ウクライナ東部はとても平和で長閑だった。良い友達も沢山居る。
宗教的な対立の線で今回のウクライナは語られる事が多いけれども、僕が知る限り
ウクライナ東部の小さな街には様々な教会があった。
カソリックの教会もあれば、ユダヤ教のシナゴーグもあったし、ムスリムも多数住んでいる。
西ウクライナの人達みたいにユダヤ人狩りをしたり正教系の教会に火をつけたり、
石を投げたりして神を冒涜するような事はしない。
ソヴィエトだった国々に急な民主化を望むのは無理な話だ。
時代の歪みには、必ずティモシェンコのような人間が出させてしまう。
ヤヌコーヴィチが大統領になれば、ウクライナが良くなるとも思えないのだが
ユーシェンコが大統領になっても「ソヴィエト的体質」は絶対に残る。
どっちにしても「利権政治」は残るのだから、ティモシェンコのような人間が
ソレを取り仕切るような状況になったらば、、、
その時は、ウクライナ建国以来の最大の悲劇だ
今頃、かの「女性闘士」はソロバン勘定に忙しいのだろう。
ウクライナを高値で売り飛ばす千載一遇のチャンスを考えると、
心が躍りだして興奮の余り夜も眠れないのかもしれない。